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【新年のご挨拶】

21年は“新しい相場サイクル”第2ステージに

【目次】

日経平均株価は30年ぶり高値の年引けも、市場実態は「調整中」?

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

それこそ100年に一度あるかないかの大惨禍に世界中が襲われた2020年。1年を通じて、新型コロナウィルスを意識せずにいられたのは年初の1、2週間だけだったでしょう。

昨年の年頭所感を思い起こせば、19年9月を境に市場が明らかに好転し、この2020年は市場全体のトレンドが本格復調する年だと、かなり確信を持って予想していました。実際に、年初は落ち着いて始まり、上値を切り上げていたのですが、新型コロナウィルス感染拡大が報じられるにつれて市場の動きは弱含み、日本市場が祝日だった2月24日、最高値を更新していた米国市場が急落。これを受けて2月25日から日本市場の大暴落が始まりました。

思い出すだけでもおぞましいギャップダウンに次ぐギャップダウンの爆下げ。1月17日に2万4000円を超えていた日経平均株価はあれよあれよという間もなく2万円割れ。なおも下げ止まらず、3月13日に1万7000円割れ。翌週末19日には1万6358円まで下げるところとなりました。

その翌週、勢いのある反発の動きとなったところが、3月終盤から下げ再開の様相となり、4月に入ると再び1万8000円割れ。これは1万6000円割れまで下げるのか。リーマン・ショックどころではない市場崩壊はもはや不可避ではないのか。と、心底凍りついたのは、忘れもしない4月3日です。

ところが、週明け6日から豹変。驚愕のリバウンドが開始します。その後、世界的な感染拡大が収束するかに見えると“第2波”が起こり、その収束の兆しも束の間、 “第3波”。感染拡大は加速する一方となり、世界経済の先行き不安一色のまま2020年を終えています。が、株式市場ではもはや新型コロナ感染拡大は4月以降のリバウンドを覆すような悪材料にはなっていません。それどころか、超絶規模の財政政策・金融政策を背景に、とりわけ米国市場は強気モード全開。8月半ばから10月末まで2万4000円手前で上値の伸びが止まっていた日経平均株価も、11月2日からショート筋が腰を抜かすような爆伸を演じ、まさかの2万7000円超え。12月に入ると、さすがに上値の伸びは止まったか、という横ばい状態になりましたが、大脳会前日の29日に700円を超える大上げで年の引け値は2万7444円と、30年ぶりの高値。年足は超長期トレンドのレジスタンスを大陽線でしっかりと上抜けするという、紛れもない強気パターンです。

日経平均株価がこれだけ強い動きを見せているともなれば、当然ながらメディアには「株高」の文字が躍ります。経済実態がともなっていない「株高」だとして、これを危険視する向きもあれば、バブル視する向きもあります。しかし、日本市場全体が株高に沸いているわけではありません。とくに、日経平均株価の爆伸モードが始まった11月以降、市場の実態は冴えない。調整気味の動きを続けています。

たとえば、2020年の日経平均株価と全銘柄平均の累積騰落率の推移を見ると、8月から10月半ばまでは全銘柄平均の動きのほうがよいことがわかります。それが11月に入ると、日経平均株価の上昇にまるでついていけません。

日経平均株価に比べて個別銘柄の足元の動きがいかに芳しくないか。その現実は、高値安値更新銘柄数の動向にも現れています。

9月中は、過去3ヵ月来の高値更新銘柄数の増勢は明らかで、安値更新銘柄数を大幅に上回っています。ところが、10月に入ると、高値更新銘柄数は減少傾向となり、その一方で安値更新銘柄数は増加傾向。11月は、高値更新銘柄数が増えたかと思えば、すぐに減少傾向に転じ、対照的に安値更新銘柄数は減ったかと思えばまた増加傾向に転じるという、言うなればもみ合いのような状態です。12月に入ると、そのもみ合いを下抜けしたかの如く、安値更新銘柄数が増加して22日には576銘柄にまで増えています。

個別銘柄がこんな状況で、どこが「株高」なのか。ましてやバブルではあり得ません。つまり、目下の日経平均株価は日本市場全体の実態を反映しているわけではない、市場の実態と乖離しているのが実情です。



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“コロナ大暴落”で市場全体のベア相場がついに終了

日経平均株価は日本市場全体を代表する株価指数ですが、株価指数という数値が市場の実態を常に的確に表しているわけではありません。ときには日経平均株価が調子よく上昇していても市場実態がよくないこともあります。その局面では、日経平均株価がいくら上がっていても買い玉のパフォーマンスはあがらないでしょう。逆に、日経平均株価が冴えない動きをしていても、市場の実態が強ければ、買い玉のパフォーマンスは面白いようにあがるはずです。8月から9月にかけての相場はまさにそうした状況だったと思います。

要は、個別銘柄の売買成果を左右するのは、日経平均株価が上がっているか、下がっているか、ではなく、市場実態のトレンド、言い換えれば、市場全体の地合いの良い状態が継続するか否かです。日経平均株価と市場実態は一致している局面であれば、取り立てて考える必要もないことですが、日経平均株価と乖離している現状、市場実態は目下どういう局面にあるのか。この先はどういう状況になると予測されるのか。これが2021年最大とも言える相場の焦点です。

これを考えるうえで非常に重要なヒントを与えてくれるのは、昨年3月の大暴落が市場全体の長期トレンドにおいてどういう意味を持っているのかだと考えています。そこでまず、日経平均株価の長期トレンドを再確認してみます。

12年12月にアベノミクス相場が始まり、15年8月から16年2月にかけて大きい調整はありましたが、18年1月まで上値・下値を切り上げる上昇トレンドが継続しています。それが2月の急落で崩れかけたものの、2万2000円をはさむ保合い的な動きで凌ぎ、18年10月に年初来高値を更新。が、それが天井となって12月に爆下げ。2万円のサポートを割り込むまで下げています。

19年に入ると回復基調となり、12月に2万4000円を回復。そして20年1月にはその上値を切り上げて18年10月の最高値レベルに達しています。ここで新型コロナの大暴落。18年12月の最安値を大幅に下回っています。

チャートの教科書的な解釈からすれば、18年1月と10月、そして20年1月につけた同水準の高値は、トリプルトップ型の長期トレンドにおける天井圏の形成。そこから18年12月の安値を叩き割る暴落は、長期トレンドがベア転換したことを示唆します。4月から6月まで陽線だった月足は7月に陰転。コロナ大暴落が長期トレンドのベア転換であるという示唆に従うならば、この7月の月足陰線から「下げ再開」となり、3月の最安値を割り込んで下げる。下値のターゲットは1万5000円前後のサポートか、悪くすれば1万4000円前後というのが、王道的な予測でしょう。

ところが、こうした解釈、予測になるのは日経平均株価だけで、その他の株価指数は全く異なります。何故かといえば、18年1月の高値の後、それと同水準まで株価を回復していたのは日経平均株価だけだからです。

TOPIXは動く方向は日経平均株価とそうは違いませんが、18年中は高値・安値ともに切り下がり、19年後半から回復基調が見えたものの、20年1月高値は18年10月高値に届かず、そこでコロナ大暴落。20年3月19日には18年12月の最安値を大幅に下回っています。

これは何かといえば、18年2月から20年3月の最安値まで下降トレンドにあったことにほかなりません。2年1ヶ月という長期間にわたる下降トレンドだとなれば、これは主要トレンドが18年1月をピークにベア転換していたことを意味します。

日経JASDAQ平均は、20年1月に18年10月の高値を超えていますが、18年1月高値にはほど遠い水準。コロナ暴落で下降トレンドが再開した格好です。よって、長期トレンドの解釈はTOPIXと大きくは違いません。18年2月から2年1ヶ月にわたってやはり下降トレンドです。

一方、マザーズ指数はこの2年1ヶ月にわたる下降トレンドがひときわ鮮明に現れています。

18年2月から上値・下値を切り下げ続ける、これはもう有無をも言わせない下降トレンド。19年1月から月足陽線が3本続き、トレンド反転が期待されましたが、その後は弱い動きに逆戻り。他の指数が回復基調を見せた19年後半も不甲斐ない動きに終わって大暴落。そして、3月13日につけた最安値は527.30ポイント。奇しくもこれは2011年の大震災直前の高値526.93ポイントとほぼ同値です。

この大震災直前の高値はリーマン・ショック後の最高値であり、13年1月にこれをブレイクしたことで主要トレンドの強気転換が確定した非常に重要なレジスタンスです。そこまで下げたということは、マザーズ指数は3月13日にアベノミクス相場の上げ幅全てを失った。つまり、13年1月から20年3月13日まで7年を超える年月は、壮大な“往って来い”だったという結末です。

このマザーズ指数の動きは極端だとしても、市場の実態のトレンドは、18年2月から20年3月まで長期的な下降トレンドにあったと見てよいのではないでしょうか。おそらく、保有する現物株トータルの評価額の推移もそうなっている人が多いのではないかと思います。18年1月まで拡大していた評価額は2月から減少傾向となり、日経平均株価が1月の高値を超えた10月にも評価額は戻らない。そして18年12月に大減少。19年後半からようやく増加傾向になったものの、やはり18年1月の水準まで戻らない。そこにコロナ・ショックで再び大幅減。そして4月以降は増加傾向となっている。持ち株の構成によっては、18年1月の評価額を取り戻しているかもしれません。



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新しい相場サイクル第1ステージの象徴はマザーズ指数の大躍進

3月の大暴落で18年2月から市場実態は下降トレンドが続いていたことが確定した。これについては、そうは異論もないと思います。それでは、その後のリバウンドは何なのか。これが一番の問題です。日経平均株価は18年の最高値を大幅に超えて30年ぶりの高値をつけていますが、3月の大暴落以後、日経平均株価以外に何十年ぶりという高値水準にある株価指数はありません。ちなみに、海外の主要な株価指数にしても、米国市場以外はたぶんそうでしょう。

チャートの教科書的には、少なくとも18年1月の高値をしっかりブレイクするまでは下降トレンドが終わったとは言えない、ということになります。しかし、そうではない可能性のほうが高いと見ています。すなわち、3月の大暴落で2年超に及んだ下降トレンドは終わった。言い換えれば、12年12月からのアベノミクスの上昇相場は18年1月に天井をつけ、2月から下降トレンドに転換し、その下降トレンドがコロナ・ショックの大暴落を以って終了。ここでアベノミクス相場という1つの相場サイクルが完結した、という解釈です。

これは同時に、4月から新しい相場サイクルが始まっていることを意味します。本当にそうなのか、現時点ではもちろん断言はできませんが、壮大な“往って来い”を演じたマザーズ指数を見ると、この解釈の信憑性は決して低いものではないと思います。

そのマザーズ指数の動きで第一に注目されるのは、13年1月に主要トレンドのブル転換の決め手となった大震災直前の高値という重要レジスタンスがコロナ大暴落時にサポートとなり、長期の下降トレンドが止まったことです。全くの偶然だとしても、527ポイントという同水準だったことは、相場の解釈として看過できません。

そして、4月から極めて強い上昇トレンドとなっています。何しろ3月13日の最安値527.30ポイントから10月14日の最高値1368.19ポイントまで、上げ幅は160%。株価が2.6倍にもなっているのです。米国NASDAQ指数どころではない、世界最強の株価指数といっても全く過言ではありません。

それにしても、何故マザーズ指数がこれほど強い上昇を見せたのか。反発の序盤は、もともと赤字や無配が珍しくないマザーズ銘柄は赤字転換したり、減配・無配転落したりする心配もない。新型コロナ感染拡大によるほとんどの銘柄は業績大悪化が確実だから、夢だけで株価が成り立っているマザーズ銘柄のほうがむしろ安心感がある、という面もあったかもしれません。そうした憶測はさておき、要は、新たなトレンドの初期段階だったからではないでしょうか。

主要トレンドが強気転換した第1ステージというのは、極めて躍動的な値動きをするのが常です。それ以前まで弱いトレンドを長らく続けていたマザーズ指数が4月から豹変し、それから半年にわたって大躍進し続けたことは、市場実態が新たなトレンドに入った、その第1ステージの象徴に映ります。

そのマザーズ指数は10月14日に18年1月の高値をわずかに抜けて最高値をつけた翌日から反落に転じ、以後2ヶ月半、弱い動きから脱することができないでいます。また、図3・図4で見た通り、個別銘柄も機をほぼ同じくして芳しくない状況です。この弱含みの動きをどう解釈するのか。4月から新たな相場サイクルに入ったという前提に立つならば、これは上昇トレンドのスタートから半年を経て、ここで第1ステージはひとまず終了したと見るのが妥当でしょう。アベノミクス相場のスタート時もそうでしたが、上昇第1波は半年程度で一旦後退する、というトレンドの理論にもこの解釈は沿っています。

ということは、現状の市場実態は第2ステージに向けての調整局面ということになります。上昇トレンドが継続するのであれば、その調整は通常3ヶ月程度で、調整完了とともにトレンドが再開します。つまり、2021年のスタートは第2ステージのウォーミングアップ状態です。順当に行けばそう遠くない時期にトレンドが再開する、と予想しています。



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日経平均株価と市場実態の乖離は解消するのか

ところで、2020年の相場でとにかく気になったことは、これまで見てきたように、日経平均株価と市場実態、とりわけ小型・新興株との動きの乖離です。これは18年2月からの下降トレンドの中でも起きていましたが、昨年11月以降はそれが非常に顕著になっています。

いったい、この極端な乖離の背景は何なのか。場中の動きを見ていて時に感じるのは、流動性の高い大型株、あるいは日経平均株価に対する寄与度の高い主力銘柄と、流動性は低いものの値動きの軽い小型・新興株との間で裁定取引をしている、いわゆるリクイディティ・アビトラージを手掛ける参加者がいるのではないか、ということです。

市場全体を強気に見ている局面では、値動きがよく値幅が狙える小型・新興株をロング、値動きが重めの大型株をショートする。逆に、市場全体に対して弱気の場合には、流動性の低くあっという間に大下げしてしまうような小型・新興株をショートする一方で、下げても下値は限定的と見られる大型株をロングする、といったパターンです。

あくまでも推測ですが、そうした参加者はそう多くはないと思います。ただ、市場全体の取引参加者が限られているうえに、高速高頻度取引が市場の中心となっている中にあっては、その裁定取引の影響も軽微では済まされないでしょう。小型・新興株が下げ、主力銘柄が買われているのを察知して、順張りのアルゴリズム取引がその値動きに便乗してくれば、乖離はさらに大きくならざるを得ません。

この乖離が解消して市場全体が揚々と上昇軌道を進むことが望ましいのは言うまでもありませんが、取引参加者が増えて多様化しなければ、折に振れて乖離現象が起きる、それも極端化しないとも限りません。この点は、2021年の相場にとってのひとつの注意点です。

もちろん、この乖離状態が全面的に悪いわけではありません。前述したように、日経平均株価は冴えないけれども、市場実態は実はよい、という局面は利益を伸ばす絶好の機会です。乖離状態が続くのであれば、その局面を逃さないことが最重要ポイントと言ってもよいでしょう。

では、どうすれば「いまその局面にある」とわかるのかといえば、市場に参加し続けていること。これに尽きます。日経平均株価を以って日本株市場を論じるメディアをいくら詳細に見ていても、市場の実態はつかめません。積極スタンスで臨んでいい局面も、警戒スタンスを取るべき局面も、その兆候を早い段階で捉えることができるのは市場に参加していればこそ、です。

再度、昨年4月から新たな相場サイクルに入ったという前提に立つならば、の予想になりますが、2年超の下降トレンドの後にスタートしたこの上昇トレンドは少なくとも3年は続きます。今年迎えるであろうその第2ステージのトレンドは、相場格言にある「疑いの中で育つ」。市場全体の現実を直接体感していることの意義が非常に大きい相場になると考えています。

当サイトでは、日経平均株価と市場の実態がどういう状態になっているのかを知る一助となるよう、「四本値市況」や過去1年来・6ヵ月来・3ヶ月来の高値安値更新銘柄、「上げトレンド・下げトレンド」銘柄リストなどの情報を提供しています。また、週次で掲載している信用倍率・評価損益率情報も、日経平均株価と市場実態の状況を把握するうえで役立つと思います。

当サイト内の各種情報を大いにご参考にしていただければ幸いです。2021年相場を謳歌しましょう!



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