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【先物上場】日経平均どころではない超偏傾Index「東証マザーズ指数」

7月19日、待望(?)のマザーズ指数先物がついに上場

大証のデリバティブ売買システム「J-GATE」が刷新されます。稼働予定は7月19日で、日経225先物のナイトセッションの取引時間が延長されるなど、大きな変更があります。

リンク≫ 次期J-GATEについて(日本取引所グループ)

このJ-GATE刷新に合わせて、「東証マザーズ指数先物」が上場されます。新興株好きの個人投資家の需要を見込んでのことだと思われますが、突っ込みどころの多そうな指数の先物を上場させる日本取引所グループの取り組みは、(取りあえず)「いいね!」という感じです。

リンク≫ 東証マザーズ指数先物について(日本取引所グループ)

この先物の原資産「東証マザーズ指数」といえば、株価指数とは思えないほど激しい値動きが何よりの特長と言えます。13年1月からのデータで言うと、日経平均株価の1日あたりのボラティリティーは1.5%。対して、マザーズ指数は2.6%です。1日に5,6%くらいは平気で動いてくれる指数ですから、先物の買いでも売りでも、小サイズかつ短期でダイナミックに利益が狙えそう、と、興味津々の人もいるのではないでしょうか。また、貸借銘柄が少なく値動きの激しいマザーズ銘柄のヘッジとして使いたいと考えている人もいると思います。

そこで、何はともあれまずは原資産の東証マザーズ指数とはどういう性格のものなのか。この指数の動きを捉えるうえでのポイントは何かを抑えておきましょう。


奇しくも対象銘柄数は日経平均と同じ225銘柄

指数算出の対象は、当然ながら、マザーズ市場上場銘柄です。算出方法は、TOPIXをはじめとする東証の他の指数と同じ時価総額加重平均型。よって、時価総額の大きい銘柄は指数に対する影響力も大きくなります。

ここで、ヤフーファイナンスでマザーズ銘柄の時価総額ランキングをチェックしてみます。

図1:ヤフーファイナンスの時価総額ランキング表

※ 今時点でのスクリーンショットをぎりぎりで見える程度に貼り付けています。上図をクリックすると、図の元になっているページに飛びます。時間が経つと元ページのデータは更新されます。

5月末時点で、マザーズ上場銘柄数は226銘柄。時価総額合計は4兆497億円です。図1の時価総額上位10銘柄の時価総額合計に対するシェアを求めてみると、以下のようになります。

図2:上位10銘柄の時価総額シェア表
コード 名称 シェア%
2121 ミクシィ 8.9
4565 そーせいグループ 8.8
7779 CYBERDYNE 8.3
6176 ブランジスタ 2.3
4593 ヘリオス 2.0
1435 インベスターズクラウド 2.0
4592 サンバイオ 1.9
4589 アキュセラ 1.8
3932 アカツキ 1.7
3914 JIG−SAW 1.5

ミクシィ(2121)、そーせい(4565)、CYBERDYNE(7779)がマザーズ御三家といったところ。いずれも8%台で、4位以下を大きく突き放しています。

先月辺りからマザーズ指数先物上場に関する報道が時折出ていましたから、この時価総額ランキングについてはご存知の人も多いと思いますが、ところが、です。日本取引所グループがサイトで公表している東証マザーズ指数先物・商品概要のページを見ると、「えっ?」と思わずにはいられないリストが載っています。

図3:JPX・5月末の時価総額上位リストの表

※ これもまた、今時点でのスクリーンショットをぎりぎりで見える程度に貼り付けています。上図をクリックすると、図の元になっているページに飛びます(ページの中段近くにあります)。時間が経つと元ページのデータは更新されるかも知れません。

図3が、マザーズ市場の5月末時点の時価総額上位銘柄です。先に見たヤフーファイナンスのランキングとずいぶんと違うではありませんか。

まず、いま何かと話題のアキュセラ(4589)が見当たらない。どういうことかと言うと、アキュセラは米国の会社で、日本国内の法人ではないため、マザーズ指数の対象から外れています。マザーズ指数の対象は、「マザーズ市場に上場する『内国』普通株式全銘柄」。つまり、5月末時点では、上場銘柄数よりアキュセラ1銘柄を差し引いた225銘柄が対象になっています。奇しくも、「マザーズ225」というわけです(今後、銘柄数は変わります)。

ちなみに、アキュセラといえば、5月25日から6月1日まで6日連続ストップ安となり、最高値7700円が6月2日には1014円まで落ちています。図2で見たシェアは1.8%とそれほど高いわけではないにしても、時価総額型の指数ならば、その値動きの影響を少なからず受けたはずです。しかし、連日ストップ安の時期、マザーズ指数の動きにこれといった影響は感じられませんでした。不思議に思っていた人もいるかもしれませんが、それもそのはず、「指数の対象外」銘柄だったのです。



“日経ユニクロ指数”どころではない驚愕の偏りぶり

時価総額の順位とシェアもヤフーファイナンスのランキングとだいぶ異なっています。上位3銘柄の顔ぶれこそ同じですが、トップはそーせいでシェアが16.9%と断トツ。2位はCYBERDYNE12.8%です(なぜ、このような順位・シェアになるのかについては、最後のMEMO欄にまとめてあります)。

ひと頃、ファーストリテイリング(9983)の株価が上昇して日経平均株価に対する寄与度が突出して高くなっていた時期、日経平均株価が“日経ユニクロ指数”などと揶揄されていました。マザーズ指数は“日経ユニクロ指数”の比ではありません(直近のファーストリの寄与度は7%前後)。そーせいだけで約17%、上位2銘柄で3割、上位4銘柄で4割、上位10銘柄ともなれば、それで指数の半分近くを占めます。とくに、ミクシィを含めた上位3銘柄の値動きは、指数の動向を大きく左右することは間違いありません。

ただし、この上位銘柄の顔ぶれや順位・シェアは意外なほど短期間のうちに変わる可能性があります。たとえば、日本取引所グループのサイトにあるリーフレットによれば、昨年末時点の時価総額上位銘柄は、以下のようになっています。

図4:昨年末の上位銘柄の表

※ 図3同様、図をクリックすると元になっているページ(PDF)に飛びます(ページの中段下にあります)。時間が経つと元ページのアドレス・データは更新されるかも知れません。

このときはミクシィが断トツで、当時そーせいはシェア5.1%で3位。5か月少々の間にかなり順位・シェアが変動しています。

マザーズ市場では、突拍子もない急騰が続いて株価が何倍にもなったり、逆に、ストップ安が連続してわずか数日にして株価が何分の一にもなったりする銘柄がしばしば現れます。そうなれば、時価総額が大きく増減し、指数に対するシェアも動くことでしょう。その時々の高シェア(寄与割合)銘柄を十分意識してチェックしておくことが、指数の動きを捉えるポイントになりそうです。

ところで、日経平均株価はTOPIXに比べて「いじりやすい」指数などと言われますが、マザーズ指数は日経平均をはるかに凌ぐ「いじりやすさ」のポテンシャルを持っています。「いじる」側の人たちからすれば、とてもおいしい株価指数、先物の上場が待ち遠しい株価指数なのではないでしょうか。

そーせい、CYBERDYNE、ミクシィのどれかが下がったかと思えば、どれかが上がっているといった昨今の動きを見ていると、先物上場に向けての準備が着々と進められているように見えなくありません。そういえば、5月16日と18日、マザーズ指数がこれといった理由もなく爆落しました(16日=▼6.77%、18日=▼7.84%)。この時そーせいの下げが際立っていましたが、いまにして思えば、もしかすると、個別銘柄と指数の値動きとの帳尻を合わせる予行演習が大々的に行われていたのかもしれません。



【MEMO】指数採用の「時価総額」は通常の時価総額とはかなり違う

日本取引所グループの時価総額加重平均型指数では、時価総額=発行済み株式数×株価×『浮動株指数』、で各銘柄の時価総額を求めます。浮動株指数(FFW: FreeFloatWeight)は、市場に出回りそうもない特定の株主の持ち分を差し引いて、実際に市場で取引される可能性のある株式数を求めるために、発行済み株式数に掛ける「掛け目」のようなものです。

ヤフーファイナンスにある発行済株式数をもとにFFWを計算してみると、そーせい(4565)が0.87、CYBERDYNE(7779)が0.70、ミクシィ(2121)が0.40のようですが、FFWは通常0.05刻みで表示されるので、そーせいの場合、日本取引所グループの指数採用発行済株式数はヤフーにある株式数と若干の差異があって、0.85か0.90のどちらかだった可能性もあります。FFWのために、普通に計算した時価総額シェアとは様相が大きく異なるところに注意しましょう。

マザーズ銘柄のFFWは現状では不明です。Topix銘柄と同様なウェブページでのフォローが今後にあるかどうかも不明です。

指数値(マザーズ指数)は、浮動株調整後時価総額合計÷基準時価総額×1000、で算出されます。基準時価総額は指数値の起算日(2003年9月12日、指数値=1000)時点での浮動株調整後時価総額合計です。

リンク≫ JPX > 株価指数 > 基準時価総額・銘柄数(月次)

5月末では、浮動株調整後時価総額合計が約1兆8335億円で、基準時価総額は約1兆6018億円なので、指数値は1144.64、と計算されます。指数採用銘柄の採用・除外の場合、基準時価総額はそれに合わせて再計算(調整)されます。

日経225では「除数」で調整しますが、東証の時価総額加重型指数では、基準時価総額の変更で指数の継続性を維持しています。個別の銘柄に増資や分割などの株式異動があったり、株主の異動があったりすると、個別の銘柄のFFW、指数採用発行済株式数などに異動が発生し、それに応じて基準時価総額が調整されます。

指数値を正確に求めたい場合、指数算出に用いる基礎数値(基準時価総額、採用銘柄、指数採用発行済株式数、FFWなど)をJPXから購入する必要があります。購入できなくても、FFWだけわかれば、大きな異動が無い限り、アバウトに指数値というか、指数値の変化を把握するのは可能でしょう。



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