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【崖っぷち?】“より弱い市場”が暗示する相場の先行き

“弱い市場”は外的環境の変化に早く、激しく反応する

「申年は波乱含み」との予測は昨年末から多く聞かれていましたが、まさか年明け早々からこんな展開になるとは。日経平均株価は大発会から6連敗。先週末までの9営業日のうち、前日比で値上がりしたのは1月13日のみ。日足陽線は2本だけです。その結果、株価は極めて際どい水準まで落ちています。

先週末16日の米国市場は下落しています。週明けの日経平均株価は、もはや崖っぷちギリギリのところの攻防になりそうです。

ドル円も際どいサポート水準ギリギリのところにいます。

チャート的に言えば、このサポート水準をブレイクすると1ドル=110円も十分あり得る、という恐ろしい予測になってしまいます。

果たして、この先どうなるのでしょうか。もちろん先行きのことは誰にもわかりませんが、もしかすると、それは“より弱い市場”が示唆してくれているかもしれません。弱い市場とは、外的環境の変化に対する耐性が脆弱な市場で、外的なストレスがかかるといち早く、それも、流動性の低さもあって激しく下落する傾向があります。逆に、環境が好転したときには派手に盛り上がります。過去の例を見ると、先に“より弱い市場”がベア相場に突入し、それまで値持ちしていた先進国の株式市場も後を追うようにしてベア転換する、というケースがしばしば観測されます。

まず、株ではありませんが、図3Aは、野村原油インデックス連動ETF(1699)です。巷で騒がれている通り、原油はベア相場をまい進しています。昨今の世界的な株式市場の下落に際して、原油相場は言わば犯人扱いされている存在ですが、商品相場を動かすのは結局のところ需給なのですから、需給の変化をもたらしている主体を犯人にすべきでしょう。

図3Bはエマージング国の株式を対象とするETF(1681)です。5月26日をピークに、その後起きた中国ショックで急落。戻りも弱く、以後は原油と同じ展開になっています(同種の東証ETFでは、「iSharesエマージング株」(1582)があります)。新興国の株式市場は、もはや明らかなベア相場です。

新興国市場とある意味で似ている“弱い市場”としては、ジャンク債市場があります。

図4Aは、米国市場に上場しているジャンク債ETF(HYG(ドル建て))。図4Bは2014年に東証に上場したIS米国ハイイールドETF(1361(円建て))です。これまた疑う余地のないベア相場となっています。


先進国の中の“より弱い市場”にも不穏な動きが出ている

今度は、先進国の株式の中の“より弱い市場”を見てみます。

図5Aは米国のS&P500、図5Bは、Russel2000という米国の小型株指数です。大型株指数のS&P500は何とかギリギリのサポート水準で持ち堪えているものの、Russel2000は14年10月の安値を割り込み、ベア転してしまっています。これは実にマズイ状況です。というのは、この2つの指数、07年にはこんな動きになっていました。

07年7月にサブプライムローン問題が表面化したのを機に、両指数とも急落。8月半ばに反転上昇した局面で、S&P500は7月の高値を更新し、その後の下落でもサポート水準で踏みとどまったのに対して、Russel2000は高値を切り下げ、さらに、その後の下落で安値を切り下げています。その先の米国市場がどうなったかはご存知の通りです。

Russel 2000 は東証ETFでは「IS米国小型株(1588)」になります。

一方、欧州の株式市場では、たとえば独仏で言えば、フランスのほうが“より弱い市場”ということになるでしょう。

やはり、ドイツ市場は何とかサポート水準で持ち堪えている一方で、フランス市場は昨年8月、9月につけた安値よりも現在の株価水準は切り下がってしまっています。これまた実にマズイ…。独仏市場の07年の値動きはこんな感じでした。

07年2月にの“上海ショック”で大きく下げた後、両指数ともに3月半ばから反転、大きく上昇しています。が、7月のサブプライムローン問題の急落局面では、ドイツ市場は3月の安値よりもだいぶ高い位置で下げ止まっているのに対し、フランス市場はこの時点で3月の安値水準以下になっています。


現状は値持ちしている日本の中小型・新興市場を要注視

ここまで見てきた通り、海外の“より弱い市場”には、「これでもか」というほど良からぬ動きが出ているわけですが、日本市場はどうかというと、幸いなことに、現在までのところ、同じような悪い兆候は出ていません。

日本株の中で最も“より弱い市場”と言えるマザーズ指数の動きを見ると、現状の株価水準は昨年8月につけた安値よりもだいぶ上。13年5月から続いているもみ合いのレンジ内で、ベア転はしていません。前回の上昇相場では、06年初の“ライブドア・ショック”でマザーズ指数がいち早くベア転したことを考えると、この動きは、ひとつの救いとも言えます。

もっとも、マザーズ指数は13年5月以降まるで上がっていなかったために、さほど下がりもしない、という見方もできなくありません。また、上場間もない勢いのある銘柄で構成されていたかつてのマザーズ指数と、何年経っても1部や2部に昇格できずにマザーズ市場に留まっている銘柄で構成されている現在のマザーズ指数とでは、指数の性格が変わっているのではないか、との指摘もあります。ただ、前回の上昇相場でやはり06年早々に天井をつけた東証2部指数やジャスダック指数も、ベア転換には至っていません。今年に入ってから日本株は、より弱いはずの中小型・新興市場よりも、日経平均株価の下げ方のほうが強烈、という状況です。

当欄で時折ふれているように、日経平均株価が強烈に下げ続けている中にあって2部・新興市場の指数はさほど下げていない局面は、市場全体の地合いはそう悪化はしていない可能性を示します。しかし、2部・新興市場が値持ちしているのは、市場のメインプレーヤーが現状はとにかく主力銘柄を売ることを集中していていて、周辺銘柄には手が回らない可能性も考えられます。その場合、たとえば日経平均株価が下げ渋るような動きが出たところで、今度は中小型・新興株に売りが集中することにならないとも限りません。そのとき、2部・新興市場の指数が昨年8月につけた安値を切り下げる展開になると、仮に日経平均株価がサポート水準で下げ止まったとしても、市場全体としてのトレンドの終わりを否が応にも意識せざるを得なくなります。

週明け以降、日経平均株価が崖っぷちで踏みとどまれるか否かが第一の注目点であるのは言うまでもありません。と同時に、2部・新興市場の動向も十分に気をつけて見ておきたいところです。



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