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【日経225】ベタベタの売りシグナルは“ダマシ”だったのか?

保合い下抜け。「下降トレンド継続」の典型パターンだったが…

8月後半から9月末まで、日経平均株価はずいぶんと激しく動いてくれました。

始まりの8月18日は前日比65円安という小幅な下げでしたが、翌19日から5営業日の引値ベースの下げ幅合計は2750円。26日から3営業日で1330円戻し、そこから再び1700円下落。9月9日、1日で1343円という爆上げを演じたものの、10日からの3営業日で800円下げ。このあと3日連続上昇したことで、そろそろ落ち着くだろうと思ったところでちょうと4連休。連休明けは不吉なギャップ・ダウンとなり、ついに29日、サポート水準をギャップでブレイクして、ベタベタの陰線で1万7000円割れ。チャートの教科書的には下降トレンド継続決定の典型とも言える弱気パターン、“もはやこれまで”の売りシグナルです。

8月25日の安値を辛うじて下回らずに耐えていたTOPIXは、より弱気パターンが鮮明です。

こうなると、日経平均は一段下のサポート水準1万6500円処までの下げは必至、というのがメイン予測となりますが、ところが、日経平均もTOPIXも、この典型的な弱気シグナルの翌日から3日連続陽線。“もはやこれまで”を象徴するかのような28日と29日に形成したギャップは、10月1日にいとも簡単に埋まってしまいました。

ギャップは、「形成された方向に勢いがある」というのが基本解釈で、その後の値動きの予測は順張り型。上昇トレンドの途中で上方ギャップが形成されれば、「上昇トレンド継続」、下降トレンドの途中の下方ギャップならば「下降トレンド継続」です。それが、重要なレジスタンスをブレイクする上方ギャップであったり、重要なサポート水準をブレイクする下方ギャップであったりすれば、その先の順張り型の動きをより強く示唆します。

ただし、上昇トレンドの最後に上方ギャップを描く、あるいは、下降トレンドの最後に下方ギャップを描くことがあるというのもまた、チャートの教科書が教示するところです。

上昇トレンドの最後に飛び跳ねるギャップはExhausion Gapと呼ばれ、短期間のうちにそのギャップより安い水準で引ける、つまり、引値ベースでしっかりギャップを埋める動きは、目先のトレンド転換を示唆する代表的なパターンとされます。下降トレンドではExhausion Gapという言葉は通常使われませんが、同じように、勢いよくギャップ・ダウンしたものの、短期間のうちに埋まってしまうケースは、目先のトレンド転換を示唆する動きです。このトレンドの最後に現れるギャップは、チャートの保合いブレイクの動きで時折観測される “だまし”シグナルのひとつのパターンとも言えます。


日経平均株価と市場実態の乖離に着目する

この9月29日の「ギャップ・ダウンでサポート割れ」の動きが“だまし”シグナルなのかどうかは、10月2日の段階ではもちろん判定はできません。結局のところ、“だまし”を認定する手立ては、これからの値動きがどうなるかを見る以外にはないわけですが、ただ、たとえば29日のギャップ・ダウンの段階で「これは“だまし”の可能性がある」という、その可能性の根拠となる現象が確認できるとしたら、そのとき中トレンドレベルのサポート水準まで下げている銘柄を買う試みはあって悪くありません。 “だまし”ではなかった場合には相応の損失処理が必要となりますが、もし、“だまし”だった場合には、絶妙の押し目買いです。

この買い方が、単なるイチかバチかの博打的な買い方と一線を画すのは、“だまし”の可能性の根拠となる現象が確認されている点にあります。それは何かと言えば、日経平均株価と市場実態の乖離です。本欄をはじめとする著述で時折ふれている通り、平常は、日経平均株価の値動きは市場の実態を反映していますが、時に、日経平均株価と市場実態が乖離することがあります。日経平均株価が非常に強い動きをしているときに、実は買われているのは一部の銘柄だけで、大方の銘柄はまるで日経平均株価についていけていない。あるいは、日経平均株価はがんがん下げているのに、大方の銘柄はさほど下げていない、といった状況です。この場合、いずれ日経平均株価が市場実態の方向に従う形で乖離は解消されると予測されます。つまり、日経平均株価がギャップを形成してサポート割れする売りシグナル状態になっているとき、市場の実態がさほど悪化していなければ、それは“だまし”シグナルの可能性がある、ということです。

日経平均株価と市場実態の乖離を示す現象のひとつとしては、日経平均株価と日経平均株価以外の指数の動きがあります。本欄でも時々取り上げていますが、東証2部指数やJAQDAQ指数、マザーズ指数は、日経平均株価に先行して動く傾向があります。この傾向は、大トレンドのレベルでも、中トレンドのレベルでも観測されます。




日経平均およびTOPIXが高値から急落し、9月29日に“売りシグナル”が出るまでの3つの指数の動きです。

まず、日経平均およびTOPIXは、6月24日・7月21日・8月11日とほぼ同水準の高値をつけていますが、2部指数とJASDAQ指数は7月21日、マザーズ指数は6月24日が高値で、以後は軟調な動きとなって早々に下降トレンドの様相になっています。TOPIXの最高値となった8月11日には、いずれの指数もすでに25日移動平均を割り込んでいる状態です。

他方、8月後半からの急落後の動きはどうかというと、いずれも8月25日の長い下ヒゲが最安値で、その後は、日経平均株価が下げる局面では下落はしていても、安値は切り上がっています。ということは、強烈に売られていたのは、225採用の主力銘柄、TOPIXに影響力の大きい高時価総額銘柄が中心で、主力でない銘柄はそう売られていたわけでもなかったと考えられます。実際、過去1年来の安値更新銘柄数を見ると、8月25日の1060銘柄が最大で、以後、日経平均株価が値を下げていても、安値更新銘柄数は200程度にとどまっています。

さらに、中小型・新興株を中心に個別銘柄の動きを見たところ。意外にしっかりした動きの銘柄に遭遇するようであれば、より一層“だまし”の可能性がある、と見てよいと思います。


ポジションを軽くしておくことが乱高下をチャンスに変える策になる

8月・9月の騰落率合計の大きい銘柄を調べてみると、日経平均株価が下げ続けて時期に絶好の押し目を形成している銘柄が散見されます。

問題は、こうした銘柄をいかに探すか、ですが、当サイトの株式市況ページの「上げ!」トレンドの銘柄リストがひとつの参考になると思います。また、恒常的にウォッチしている銘柄で、ここ数ヶ月の買われ方が強かった銘柄があれば、サポート近辺まで下げたときの状況に注目してみるのもよさそうです。

この銘柄は4200円処のレジスタンスを7月に抜けてから上値の伸び方がよくなった銘柄ですが、9月8日、9日にこのサポート水準まで下げたところで反転。一挙に最高値を更新するに至っています。

もっとも、こうした強い動きをしている銘柄があるとはいっても、また、2部指数や新興市場の指数が底堅い動きを見せてはいても、現段階ではまだ「市場全体が復調した」と言える状況ではありません。日経平均株価も、その他の株価指数も、8月からの急落で強そうなレジスタンスが複数形成されています。6月まで続いていた大トレンドの上昇軌道に戻るとしても、それまでには時間を要すると見ておいたほうがよいと思います。よって、ここから押し目を狙って買い出動して、それが奏功した場合でも、短期で利益確定するのが手堅い安全策です。

大トレンドの底値圏でも、中トレンドレベルの絶好の押し目でも、仮に、「その可能性が高いのではないか」と察知できたとしても、そのとき痛んだポジションを抱えていると買い出動が実践できなくなってしまいます。短期の利益確定によってポジションを軽くしておくことは、次の機会を捉えるうえでの策でもあります。先物主導による乱高下は何時起きるかわかりません。それをチャンスにするためにも、身動きが取りやすいポジション状態にしておきたいところです。




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保ち合い、ギャップについて
かなり詳しく解説しています。

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