なでしこインベストメント > 高利回り債券の見つけ方 >  【債券価格】金利が上昇すると債券価格はどのくらい下がるのか

はじめての人のための<円建て&外貨建て>
『日本一やさしい 高利回り債券の見つけ方』

【債券価格】金利が上昇すると債券価格はどのくらい下がるのか

(3)利回りの差を極小にすると「債券価格の金利感応度」がわかる

利回りの変化が「極々わずか」と想定する

前ページでは2点の(1+金利r)の差を「R2−R1」、それに応じた債券価格の差を「P2−P2」としましたが、これを、

としてみます。この△は2つの量の差を表すときに用いられるもので、「デルタ」と読みます。

そうすると、R2は、

と表現できます。

これを用いて前ページの式を書き換えると、

となります。

もし、2つの利回りR1とR2の差が極々わずかしかない、つまり、△Rの値が極小だとしたら、先ほどの「2点を結んだ直線」は、あたかも「R1という一点だけにタッチしている接線」といっても差し支えないような格好になるはずです。

とすると、この式で出てくる直線の傾きは、利回り2%なり、5%なり“ジャストスポット”における債券価格の反応度合いを示す、と考えて差し支えないことになります。

これは一体何かというと、これこそが高校の時に習った「微分」なるものにほかなりません。この「利回りの極々わずかな変化に対する、債券価格の反応度合い」を表す式を求めることが、「債券価格の式を『1+利回り(金利)』のRで微分する」ということです。

R1を単に「R」と書き換えて、かつて習ったような書き方をすると、

のようになります。

「lim」なる記号がありますが、これは「ΔRを極限まで、ほとんどゼロと言っても差し支えないくらいに小さくする。だがしかし、完全なゼロではない」という意味です。

この式をせっせと計算することが、「債券価格Pを『1+利回り(金利)』Rで微分する」という作業です。そして、この式をせっせと計算して出てきた結果は「導関数」と呼ばれます。

※「微分とはどういうものだったかな?」という方は、微分すると「変化の様子」が見えてくる、をご覧下さい。

「期間が長い債券ほど価格の金利感応度が高い」はこれで一目瞭然

かつて、y=x2 を x で微分すると 2x になる、y=x3 を微分すると 3x2 になる、といった具合に、「y=xn を x で微分すると nxn-1 になる」という公式を覚えている人も多いと思います。これは、先ほどと同じような「Δx」が分母にある式をせっせと計算した結果です(正確には、せっせと計算した結果は「完全にこれらと同じ」ではなく、「これらと同じといっても差し支えない」ものになります)。

n乗が負の値のときもこれと同じように、y=x-n を x で微分すると、

 -nx-n-1

という式になります。

※「なぜ、そうなるのか」「さっきの式の分母にあった△Rはどうなるんだ」という方は、xn を微分すると「n*xn-1」になるのは何故?をご覧下さい。

これを用いると、債券価格を求める式 P = 100・R-T をRで微分した結果は、

といった式で表現されます。

ここで「R-T-1」に注目します。

「0.5乗とは一体どういう意味なのか」の中で紹介した指数法則その2を使えば、これは、

と同じです。

そうすると、先ほどの式は、

と書き換えられます。

この式の中に「100・R-T」が入っていますが、これは微分する前の式と同じです。つまり、この部分は「利回りが変化する前の債券価格P」を表しているわけです。

そうすると、ある利回り水準が(極々わずかに)変化したときの債券価格の変動度合いは、もとの債券価格に「−T/R」を掛けた値になります。これが、「利回りの(極々わずかな)変化に対する債券価格の感応度」を表す式です。

この式を見れば、「期間が長い債券は分子のTが大きくなるので、債券価格がマイナスに動く度合いも大きくなる」、「期間が同じであれば、もとの利回り水準が高いほど分母のRが大きくなるので、マイナスの値は小さくなる」ということがわかると思います。

数字を入れて計算してみるととんでもない結果に…

実際に、具体的な数字を入れて「利回りの変化に対する債券価格の感応度合い」を調べてみましょう。

期間Tを30年として、利回り5%、すなわちR=1.05を入れてみます。

この時点の債券価格Pは「100・(1.05)−30」で23.1377ですから、

何と「−661.0784」というとんでもない数字が出てきてしまいました。どう考えても、「利回りが5%から変化したときの債券価格が、もとの債券価格よりも661.0784安くなる」などということはあり得ません。

一体どういうことでしょうか。

と、ここで式をよくよく見ると、この661.0784というのは、債券価格が動いた大きさ(変動幅)の△Pではなく、△Pを利回りの変化△Rで割った値です。

債券価格がどのくらい動くか、価格の差ΔPを調べるのであれば、この−661.084に△Rを掛けなければなりません。

金利が5%から5.1%に変化したとすると、△Rは「1.051−1.05」の0.001です。これを−661.0784に掛けると、△Pはもとの債券価格よりも0.661安くなる、という結果になります。

利回りが5%のときと、5.1%のときの債券価格をそれぞれ計算してみると、

  金利5%のとき    P=23.1377

  金利5.1%のとき  P=22.4863

で、0.1%利回りが高いときの債券価格は、もとの債券価格よりも0.651安くなる計算です。まあ、先ほどの微分で出した結果とだいたいは合っています。。

なお、金利の差をもっともっと小さくして△Rを0.000001とすると、ほぼぴったりの計算結果になります。

【債券価格】「金利が上昇すると債券価格はどのくらい下がるのか は、以上です。

↑ Top へ戻る。
Copyright (C)2011 Nadeshiko Investment Co., Ltd. All Rights Reserved.