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【VIX指数ETF・その1】まずは“連動元”の指数を観察してみる

最初にお断りしておきますが、なでしこは投資信託の専門家ではありません。以下、表現の正確性・厳密度を保証するものではないことをご承知下さい。本当に投信って、よくわかりません。

4月15日掲載の「日経レバレッジ指数ETFの使い方」の続編として、2回にわたって「国際のETF VIX短期先物指数」(1552)を取り上げます。

と、その話の前に。「レバレッジ指数ETF」「インバース指数ETF」について、ヤフーファイナンス(アメリカ)にこんな記事が出ていました。

Big Banks Fined $9 Million Over Risky Products(大手銀行、リスク商品で900万ドルの罰金)」。

リスク商品を個人投資家に販売した際に問題があったとして、シティグループ、モルガンスタンレー、UBS、ウェルズファーゴがFINRA(アメリカの証券業協会的な機関)に罰金を支払う との報道です。その「リスク商品」というのが、何を隠そう「レバレッジ指数ETF」「インバース指数ETF」だというのです。

08年〜09年6月に販売したETFが問題視されているようです。その頃、市場は激しく乱高下していましたから、レバレッジのみならず、インバースも基準価格(NAV)は相当に毀損したものと思われます。株価が戻ってもレバレッジETFの基準価格は元に戻らない、インバースETFを買ったのに下落相場でも思ったほどヘッジ(リスク回避)に役立たない、等々の問題が想像されます。

これらのETFは長期保有には向かないのですが(なぜ、向かないのかは4月15日掲載情報を読んでみてください)、長期保有した投資家がかなりいたのでしょう。

日本語記事ありました。≫米シティなど4行、ETF販売めぐり和解金7.3億円支払い合意

今回登場するETFも、長期投資には向きません。買ってはいけない、という話ではなく、買い方・売り方をよく考えましょう、という話です。よく考えて使うと、これは結構面白い売買対象かも知れません。


「『“恐怖指数”を対象にした先物』を対象にした指数」に連動

「国際のETF VIX短期先物指数」は、2010年12月20日、大証に上場されました。昨年8月のベア相場で非常に人気を集め、以後、その人気は定着した感があります。

このETFの価格は何に連動するのかというと、「S&P500 VIX短期先物指数(円換算)」です。

VIX指数といえば、別名“恐怖指数”としてよく知られています。相場が急落するときに急騰する、縁起のよろしくない指数です。

このETFの価格は、その“恐怖指数”に連動して動く、と言うと、当たらずとも遠からず。正確には、VIX「短期先物」指数なるインデックスの円換算価格に連動します(さらに正確に言えば、連動するように設計された債券に投資するETFです)。詳細については、国際投信投資顧問のページでご確認ください。

VIX短期先物指数とは、「VIX短期先物」という先物をずっと保有し続けた場合(延々ロング)、資産額はどう推移するか、を表します。スタートの指数値は05年12月20日「10万」です。

VIX短期先物は1ヶ月ごとに限月のある先物なので、「第1限月の1部を売却して第2限月を買い付ける」という乗り換えを毎日繰り返し、第1限月と第2限月の加重平均した残存日数が常に1ヶ月になるようにします。直近の指数値は6830.03(5月3日)です。

※直近の指数値とその推移も、国際投信投資顧問のサイトで確認できます。≫こちら。

それにしても、05年12月に「10万」でスタートしたものが、いま現在「6830.03」とは。ずいぶんと下げたものです。

VIX短期先物指数そのもののデータの持ち合わせがないため、代わりに、この指数に連動する「iPath S&P 500 VIX Short-Term Futures ETN(NYSE上場、ティッカー:VXX)というETNのデータを見てみました。おおもとのVIX指数との推移と比べてみると、VIX指数が跳ね上がるところでは、VXXも確かに上がるのですが、じわじわと下降トレンドに入ってしまっています。VIX短期先物指数もこれとほとんど同じでしょう。VIX短期先物指数とは、VIX指数そのものとはどうも違うようです。


これまた、長期投資には向かない? その理由とは

<図-01>をみると、VIX短期先物指数は、長期的には減価する傾向が疑われます。実際、国際投信の販売用資料には、「ボラティリティーが低いときは【S&P500 VIX短期先物指数】は徐々に減価し続けます。」「長期保有には不向きな指数と考えられます」と記されています。

何をもって減価するのかというと、VIX指数先物の期近物と期先物との関係です。VIX指数が低い場合、期近物より期先物の価格が高く、反対に、VIX指数が高い場合には、期近物よりも期先物のほうが安くなる傾向があります。VIX指数が低い(高い)と思われている局面では、「いずれVIX指数は上昇(下落)するであろう」ということで、限月まで時間のある期先物にその期待が反映される格好です。

先述したように、VIX短期先物指数は、残存日数を維持するために、日々、期近である第1限月を売り、期先である第2限月を買います。そうすると、期近よりも期先物が高い(=VIX指数が低い)状況では、「安いものを売って、高いものを買う」、逆に、期近物よりも期先もののほうが安い(=VIX指数が高い)場合には、「高いものを売って、安いものを買う」ことになります。

一体、「安いものを売って、高いものを買う」状況と、「安いものを買って、高いものを売る」とでは、どちらが多くなるのでしょうか。

おおもとのVIX指数の推移を改めて見てみましょう。

07年7月からの推移です。ピンクの線が期間中の指数の平均値です。さて、指数が跳ね上がっている局面と、指数が平均以下に落ち込んでいる局面と、どちらが多いように見えるでしょうか?

VIX指数を2.5刻みの度数分布表にしてみました(縦軸が各度数区分に当てはまる日数)。これを見ると、平均以下で推移する日数が多いことがわかります。ということは、「期近物よりも期先物のほうが高い」ケースが多い、つまり、「安い第1限月を売って、高い第2限月を買う」ケースのほうが多そうだ、と言う推測にならざるを得ません。

長期でみれば、「VIX短期先物指数は、この先物の限月間の価格差を支払いながら継続していく指数である」と言い切りまではしませんが、その推移(実績)を見れば、傾向ははっきりしています。長期で保有していればどんどん減価していきます。 よって、長期保有には向きません。


ドル建ての連動元指数はどんな値動きをするのか

「国際のETF VIX短期先物指数」の買い方・売り方を考えるために、まずは、先ほど紹介したNYSE上場のVXX ETNのデータを使って、連動元のVIX短期先物指数の性格を把握しておきましょう。

<図−01>では、VIX指数とVXX ETNの価格を比較してみましたが、今度は、VIX指数の変化とVXX ETNの価格の変化に焦点を当ててみます。図−04は、横軸にVIX指数の前日比率、縦軸にVXX ETN価格の前日比率をとってプロットした相関図です。回帰直線が右肩上がりですから、概ね、VIX短期先物指数指数とVXXの価格は連れて動く傾向はあると言えますが、ぴったりとは連動していないのがわかります。VIX指数とVIX短期先物指数とは、動き方に違いがあるということです。

次に、ここまで出てきた各指数の根源である株価指数・S&P500との関係を見てみます。

横軸にS&P500の前日比率、縦軸にVXX価格の前日比率をとっています。赤の線が回帰直線、青は、両者の関係を2次式近似した曲線です。お互いに反比例の関係にあることがわかります。

赤の回帰直線で言えば、直線の式の x の係数が「−2.7936」。これは、S&P500が1%上昇すると、VXXは約2.8%下落する、という関係を表します。他方、青の2次式近似の線は、S&P500が上昇した場合のVXX価格の下落はそれよりもマイルドで、逆に、S&P500が下落した場合には、VXXの上昇は激しめである傾向を語っています。VXXのロングは、S&P500の完璧ヘッジにはならないものの、アバウトヘッジで狙える面はありそうです。

ちなみに、期間中の前日比率の標準偏差は、S&P500が1.2%、VXXは4.0%でした。かなり違います。日本株でいうと、日本マクドナルドとサイバーエージェント、名鉄と鬼ゴムくらいの違いです。「VIX短期先物指数に連動するVXXETNはかなり激しく動く」という点を、まず抑えておきましょう。


順張り売買が安全

では、このVXXを実際に売買するとしたら、どんなやり方が有効なのでしょうか。これは、「国際のETF」の連動元であるVIX短期先物指数の有効策でもあります。

緑は「VXX価格が前日比上昇ならロング、前日比下落ならショート」という順張り売買のシミュレーション結果です。累積パフォーマンスは右肩上がりですから、値動きの傾向は“順張り型”であると解釈されます。引値が前日比で上昇した日数は282日、下落した日数は427日、変わらずは8日でした。上昇した日よりも下落した日のほうが5割ほど多い計算です。

オレンジ(MA5)は、引値の5日移動平均値との乖離率が「マイナス0.36%」より小さい場合はショート、大きい場合はロングとした結果です。この場合、5日のうち3日はショートポジションとなります。

青(MA25)のほうは、25日移動平均値との乖離の基準を「プラス2.16%」とした場合で、こちらは5日のうち4日はショートポジションです。上昇日よりも下落日のほうが多いので、このような乖離基準の調整は必要でしょう。

S&P500とVIX指数の値動きをシグナルにした売買も試してみました。

オレンジは、S&P500が前日比上昇ならVXXをショート、前日比下落ならVXXをロングするという逆張り売買の結果です。有効とも、有効でないとも言えない感じです。青はVIX指数が前日比上昇ならロング、前日比下落ならショートという順張り売買の結果で、こちらは、累積益が約300%ですから、数字としては悪くはありません。ただ、昨年後半からパフォーマンスが伸びなくなっています。何かが変わっているようです。

それなりに悪くない結果も得られてはいますが、どれもピリッとしない印象が否めません。何かよさそうなものはないか、テクニカル指標などをいろいろ試してみたところ、注目できそうなシグナルが見つかりました。

ボリンジャーバンド(20日)のBandWidthが33.1より拡大した場合に限りロングポジションを取り、それ以外は全部ショートという売買の累積パフォーマンスです。要するに、ボラティリティーが拡大したときだけこのETNを買い、そうでない場合は売り続ける、という想定ですが、2011年はふるわなかったものの、今年に入ってからは非常に好調な推移となっています。「ボラティリティー指数にはボラティリティー指標が有効」ということでしょうか。

08年〜09年前半までの荒れた相場ではどうなったのか、データがないので検証できませんが、VIX短期先物指数は「上がったら買う、下がったら売る」の順張りのポジションを基本に考えるのが良さそうです。そうすると、値動きがさほど大きくない平常時はこの指数は下がる傾向があるので、よって、ショートポジションが有効と見られます。

この「平時のショートポジション」のほうが保有日数は多くなりますが、ただし、どこかでロングポジションに切り替える局面、すなわち、ボラティリティーが拡大しVIX指数が跳ね上がるような局面がやってくるはずです。この「平常時のショートポジション」を「有事のロングポジション」にドテンするポイントをいかに見つけるか。これが、「国際のETF VIX短期先物指数」の使い方においても大きなカギとなりそうです。次回、さらに具体的に考えていきましょう。


(補足)2倍レバレッジのVIX ETNで問題発生?

米SEC、クレディ・スイスのVIX連動証券取引を調査=報道(3月29日)

「VelocityShares Daily 2x VIX ST ETN (TVIX)」 をめぐるクレディ・スイスの行動が問題視されています。この商品はVXXの2倍レバレッジ版みたいなものですが、 取引価格の急落を受けてSECが調査をしているとのことです。その後どうなったかは、現時点では報道は見あたりません。

なんだ、ETF(ETN)は問題だらけだな、時差を置いて日本でも起こるのではないか?と問われたら、それはありえない、と答える根拠はありません。

ちなみに、ベロシティーシェアーズの2倍VIX先物指数ですが、「Daily」と付いているのは、「その日に限れば」指数の2倍の値動きをするという意味です。つまり、デイトレ以外は2倍の値動きを保証しないということです。「ST」は「Short Term」で短期先物を指します。

このETNが急落するその前には、市場での取引価格がNAV(基準価格)の約2倍近くまで高くなっていた、というのがあります。その発端は、ETNの発行元であるクレディスイスが新しい受益証券(Note)の発行を中止したことです。VIX先物市場でETN運用者の取引シェアが大きくなりすぎていた、というのがその理由のようです。新しい受益証券の発行停止によってETNの需給バランスは崩れ始めます。

ETF(ETN)がNAVよりプレミアム(高い)で取引されていれば、発行元から直接新しい受益権(証券)を買ってきて、それを市場で売却することで市場価格はNAVに収れんしていきます。逆にディスカウント(安い)で取引されている場合は、市場で買い集めて発行元にそれをNAVで買い取って(ETF(ETN)の解約)もらうことで、市場価格はNAVに収れんします。どちらの手続きも発行元に手数料を払うので、NAV乖離が小さい うちはこうした動きは起きませんが、手数料を払っても儲かるほどNAV乖離があれば、タダ飯のチャンスとなります。

新証券の発行が止まった2倍VIXETNは市場で品不足の結果、すごいプレミアム状態となっていたわけです。が、なぜか3割安で引けた日がありました。引け後にクレディスイスは新しい受益証券の発行を再開すると発表しました。次の日、更に3割下げプレミアムは剥落しました。これはどういうことなんだ、というのがSECの調査開始となったわけです。

Lessons from the TVIX Washout (Forbes)、などの記事を参考にしました。気になる人は読んでみて下さいね。



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